(3)顔貌の加齢性変化(主にたるみ)と男女の違いに関して
■なぜ、下眼瞼のたるみは男性に目立つのか
- 40歳以降、男性は女性に比べて下眼瞼のたるみが目立つ。
- 男性の方が眼窩の容積や加齢に伴う眼窩の拡大が大きいため、前方突出する眼窩脂肪の量が多い。
- 下眼瞼の構造物は支持組織が乏しいため、内側からの圧力の影響を受けやすい。
1)眼窩脂肪の容積の違い
日本で一般的に使用されているC T(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影法)により、眼窩のサイズや加齢性変化に関する研究がなされてきました。
Furutaら(2000年)によると、12歳以下では眼窩の容積に男女差は見られない一方で、12歳以降では男性の眼窩の容積の方が有意に大きく、18~40歳までの平均眼窩容積は男性で23.6cm3、女性で20.9cm3と報告しています。また、40歳以上では男性で25.3cm3、女性で22.9cm3であり、いずれも男性の方が大きい傾向にあります。また、眼窩の容積は年齢と強く相関しており、男性では14.9歳まで、女性では10.9歳まで急速に増加することがわかっています。さらに、眼窩容積は40歳以上の男女で有意に増加しています。
また、Weaverら(2010年)らによれば、眼窩の下縁の周囲は男性の方が女性に比べ約3.6mm長いと報告しています(p値=0.03)。
一方で、眼球容積については、男性の方が女性よりも大きい傾向はありますが、有意差を示す程ではないと報告されています。
すなわち、女性に比べ、男性の方が眼球に対する眼窩の容積が大きいため、眼球のクッションとなる眼窩脂肪が多いと言えます。そして、加齢に伴い眼窩が拡大する為、加齢とともにより眼窩脂肪が前方に突出しやすくなると言えます。結果的に下眼瞼のたるみが男性に目立ちやすい原因となっています。
2)眼窩周辺の皮膚は支持組織が乏しい
眼窩周辺の組織は、薄い皮膚、薄い眼輪筋、薄い皮下脂肪で構成されており、骨との連続性がありません。その為、下眼瞼の瞼板から頬骨下縁までの皮膚は支持組織が乏しく、空中に浮いているイメージになります。その為、内側からの圧に弱く、眼窩脂肪の突出量の多い男性の方が、たるみが目立つことになります。
3)皮膚の弾力の違い
皮膚の弾力の違いに関しては、これまで様々な臨床研究がなされてきましたが、統一した見解は出されておりません。一般的な傾向として、女性の方が男性の皮膚よりも弾力性(伸ばした後に後戻りする力)が強いとされています。ただし、目周りの皮膚に関しては、有意差がないとの報告もあり、現時点で断定することはできません。
■まとめ
- 40歳以降、男性は女性に比べて下眼瞼のたるみが目立つ。
- 男性の方が眼窩の容積や加齢に伴う眼窩の拡大が大きいため、前方突出する眼窩脂肪の量が多い。
- 下眼瞼の構造物は支持組織が乏しいため、内側からの圧力の影響を受けやすい。