■皮膚の弾力に影響する成分
皮膚の弾力に影響する主な要素は下記です。
- 膠原繊維(コラーゲン)
- 弾性繊維(エラスチン)
- 基質(主にヒアルロン酸)
皮膚を層別に考えると、表皮の下部に存在する真皮が皮膚の弾力に大きく影響しています。真皮は表皮の15~40倍の厚さがあり、乳頭層、乳頭下層、網状層の3層構造をしています(図1)。そのうち、網状層は線維成分が密な結合組織であり、弾力の源となっています。
■真皮を構成する成分
真皮を構成する成分は主に、線維性組織を形成する間質成分と、細胞成分の2つに分類されます。主成分である間質成分は、大部分が膠原繊維(主にⅠ型とⅢ型コラーゲン)から構成されており、その他に弾性繊維、基質などであり、総じて“細胞外マトリックス”と呼ばれています。
一方で、細胞成分は線維芽細胞、マクロファージ、肥満細胞、血管、神経などです。
肌の弾力に最も影響を及ぼす網状層の細胞外マトリックスの中でも、皮膚の弾力に影響する主な要素は、①膠原繊維(コラーゲン)、②弾性繊維(エラスチン)、③基質(主にヒアルロン酸)の3つです。
※新しい皮膚科学(著:清水宏)から一部改変
①膠原繊維(コラーゲン)の特徴
膠原繊維(以下、コラーゲン)は真皮の約70%を占め、煮ると膠(ゼラチン)を生じることから、“膠原繊維”と名付けられました。
きわめて強靭な繊維であり、特に線維の走行に沿って働く張力に対しては抵抗が強く、伸展性に乏しいため、コラーゲンは皮膚の強度を保つ支持組織として重要です。
コラーゲンは約29種類のサブタイプが存在し、真皮を構成する80%のコラーゲンはⅠ型です。
②弾性繊維(エラスチン)の特徴
弾性繊維は肌の弾力性を作り出す線維です。膠原繊維に比べて強くはないですが、極めて弾力性に富んでいます。頭皮や顔面に多く存在し、真皮以外では、動脈や腱なども伸展性に富んだ組織にみられます。
弾性繊維(エラスチン)は膠原繊維(コラーゲン)の層の間に介在しています(図2)。
※美容皮膚科学(監修:日本美容皮膚科学会)を一部改変
乳児期~若年者の弾性繊維は直線的な網目構造を形成していますが、加齢や紫外線の影響により、不規則に湾曲・偏位し、細い繊維が新しく形成され絡み合っています(図3)。
※美容皮膚科学(監修:日本美容皮膚科学会)を一部改変
③基質(ヒアルロン酸)
真皮の細胞や繊維の間には、糖やたんぱく質を含むゼリー(ゲル)状の物質が存在しており、これを“基質”と呼びます。基質を構成する成分は糖タンパクあるいはプロテオグリカンです。
糖タンパクは、コラーゲンやエラスチンと結合して、線維を安定化させ、皮膚を柔軟にしています。
プロテオグリカンはたんぱく質にムコ多糖が多数結合した、巨大な分子(105~106以上)です。真皮のプロテオグリカンはヒアルロン酸が多く、主に水分保持に関与しています。
これらの多くは、線維芽細胞から産生されています。
表皮の保水力に関しては下記を参照。
男性の美容を真面目に考える⑨ 〜皮膚から蒸散する水分量に関する男女差〜
■まとめ
- 皮膚の弾力に影響する主な要素は、①膠原繊維(コラーゲン)、②弾性繊維(エラスチン)、③基質(主にヒアルロン酸)である。
- 膠原繊維(コラーゲン)は皮膚の強度を保つ支持組織として働く。
- 弾性繊維(エラスチン)は皮膚の弾力性を保つ働きをしている。
- 基質は皮膚を柔軟にし、かつ、保水性を保つ働きをしている。
- 弾性繊維(エラスチン)は加齢や紫外線の影響で、不規則に湾曲・偏位し、肌の弾力が失われていく。