■今後の人口ピラミッドの推移
2024年に戦後のベビーブーマーである団塊の世代が全員75歳以上となり、65歳以上の高齢者数は3,677万人(国民の3分の1)に達すると予想されています(図6)。
また、平均寿命も健康寿命も男女ともに伸びています。女性の場合は、平均寿命と健康寿命の差が表す「不健康割合」が、男性よりも高く、人生の中で「不健康」として過ごす時間は女性の方が長いと言えます(図7)。
■年齢に伴う自立度の変化パターン
自立度とは、「自分の身の回りのことを自分でできるか」をあらわしています。すなわち、日常生活の活動動作(歩行、トイレ、食事など)に援助は必要か否かということです。
図7のグラフは全国の高齢者を20年間追跡した調査結果です(図7)。これは、私たちの臨床経験をよく反映しています。実際に、70歳を過ぎたころ、どのように診察室に入ってくるかで、その患者さんのその後の自立度がだいたい予想できます。
70歳のころに、すでに動作が緩慢であったり、歩行がおぼつかないケースでは、早期に自立度が低下するパターンが多いです。
■要介護認定者数の年次変化
要介護(要支援)の認定者数は、平成30年4月の時点で644万人、それまでの18年間で約3倍に増加しています。すなわち、平均寿命と健康寿命のほぼ平行した増加に伴い、自立度が低下して介護が必要な高齢者の数が増えていると言えます(図8)。
■地域包括システムの変遷
さらに、現在、国策として患者や病気を「病院完結型」で治療するのではなく、「地域完結型」を推奨しています。これまでの医療機関は、「治療、救命、延命、社会復帰」までのすべての役割を担い、退院後は「健常人を前提とした暮らしの場」として考えていました。しかし近年、超高齢化社会になり、退院後も「病気と共存しながらQOLの維持や向上を目指す」場所として、地域社会を位置づけるようになっています。
国策として、在宅医療の充実を図っているのもその為です(図9)。
■Part.2のまとめ
- 超高齢化社会になり、女性の方が「不健康」で過ごす時間が長くなっている。
- 若々しく、自立した老後を過ごすには、70歳がターニングポイントである。
- 国策として、健康寿命の延長を掲げている。
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