カンナビジオール(CBD)とエンドカンナビノイドシステム(ECS)に関する総論

  • カンナビスの嗜好目的での利用は物議があるが、医学的には幅広い治療効果を認めている。
  • ECSはホメオスタシス(恒常性)を調整する役割がある。
  • カンナビジオール(CBD)とは陶酔作用の持たないカンナビノイドである。

世界保健機関(WHO)によれば、世界中の人口の2.8%がカンナビス(大麻草)を摂取しています。カンナビスの嗜好目的での利用は物議がありますが、医学的には幅広い治療効果を認めており、注目されています。特に、インターネット上では、健康や疾病に対する効果の報告が増えており、社会的な認知度が高まっています。一方で、その薬効に関して分析しているものはわずか6%にすぎません。その為、研究者、臨床医、一般人が独学で得る知識や経験は限定的と言えます。

カンナビス(大麻草)は1万1,500年前から1万200年前まで、日本から東ヨーロッパでほぼ全域で使用されていました。その為、多くの歴史書や古い医学書がカンナビスの医療応用を報告しています。一方で、ヘンプは農作物として、船のロープやマスト、衣服などの繊維製品を作るための人気作物でした。そして、1990年初頭に、ヘンプの加工をよりいっそう迅速・安価・安易にできる技術の台頭に脅威を感じた他の業界が一丸となって、カンナビスのネガティブキャンペーンを行いました。その後、国際法の後押しもあり、自然の植物の使用を禁じ、犯罪色を強めていきました。けれども、ヨーロッパでは1998年にTHCの含有率が0.3%以下であるものに限ってヘンプの栽培が合法化されました。これにより、ヘンプ由来の植物性カンナビノイドの中でも最も重要なカンナビジオール(CBD)を含む、様々な製品、食品、サプリメントが生まれました。現在、アメリカの多くの州では、連邦政府が「マリファナ」の使用を禁じている一方で、多くの州ではカンナビスの医療利用を合法化しており、多くの国がこれに追随しています。

エンドカンナビノイド・システム(ECS)とは1989年に発見された脂質ベースの信号伝達システムで、すべての哺乳類に備わっていることがわかっています。ECSはカンナビノイド(CB)受容体、内因性リガンド、合成酵素、分解酵素から構成されており、主要なCB受容体はCB1(1988年ごろに発見)、CB2(1990年ごろに発見)があります。主に、CB1受容体は神経調節作用を、CB2受容体は免疫調整作用があります。そして、脳は身体中で最もCB受容体の密度が高い臓器であり、高次の認知機能、自律神経系に起因する運動調節機能や感覚機能に関連しています。また、カンナビノイドは内因性か植物性かに関係なく、身体全体に存在する受容体と結合します。ECSはホメオスタシス(恒常性)を調整する役割があり、シナプスや細胞表面に刺激や不足があるとそれに反応し、皮膚を構成する表皮細胞や線維芽細胞も例外ではありません。

カンナビジオール(CBD)とは陶酔作用の持たないカンナビノイドです。農作物としてヘンプから抽出することができます。CBDはカンナビノイド受容体に直接結合せず(アロステリック効果)、それ以外の受容体と結合します。例えば、コレステロールの代謝を制御するストレス遺伝子(Soat2やCyp27a1)や、セロトニン受容体に作用するため、気分や痛覚に影響します。また、アナンダミドやその他の重要な脂質を分解する酵素の産生を阻害することで効果を発揮する前に分解されてしまう内因性のカンナビノイドが組織に長く留まり、より多量のカンナビノイドがCB受容体と結合することができるようになります。

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