「人と人の接触を8割減らせば感染者数は減少に向かう」
これは統計学的に算出されたホントのことだと思います。しかし、それを多くの報道機関は正しく理解せず、「人出を8割減らさないといけない」と報道しました。これはウソです。よく読むと言葉遣いが多少違うことが分かります。感染症の専門家が言ったことは人と人の接触を減らすことでしたが、多くの報道では街に出てくる人の頭数を8割減らさないといけないという話にすり替えてしまったのです。これは専門家の言葉を正確に理解していなかったからだと思います。
例えばこういう例を考えて見ましょう。ある会合で一つの部屋に10人の人が集まったとします。この場合、人と人の接触数を組み合わせ数で計算すると最大で 10C2 = 45通りあり得ます。もし出席者数を8割減らして2人しか集まらなかったとすると、人と人の接触数は最大でも2C2 = 1通りになります。つまり、人と人の接触数は元の1/45 ×100 = 2.2%まで減ってしまい、97.8%も減少します。もし参加者を5割減らして5人の人が集まったとすると、人と人の接触数は最大で5C2 = 10通りとなるため、接触数は元の10/45×100 = 22.2%となり、ほぼ8割近く減少しています。
つまり、「人と人の接触数」と「人の頭数」とは別の概念です。これを一万人が集まった場合、人と人の接触数を8割減らすには、同じ計算を行うと頭数を55%程度減らせばよいことが分かります。実際には、一万人の人が他の全員と接触することはないため、この計算通りにはなりませんが、少なくとも頭数を8割減らす必要はありません。
以上は単なる計算上の話です。では非常事態宣言において、多くの人が感じた”街に出る人の頭数を8割減らす必要がある”ということは間違っていたのでしょうか。この誤解を政策という観点から見ると、結果的にはよかったのではないかと思います。日本中の人間の生活行動を変化させることは容易ではないことは想像出来ます。たとえ誤解から生じた世論であっても、この程度のことを言わなかったら人の動きが変わらなかった可能性は十分考えられます。次の図を見て下さい。
これは日本における1日あたりの新型コロナウイルスの感染者数の推移です。これが明らかなように5月末には感染者数は激減しました。つまり、結果的には”頭数を8割減らす”という報道は、政策的には大成功したと言えます。